社内研修用動画の試験放送中です。
デザイナーの上杉さんに「ウェブ制作におけるコンセプト設計」について考え方を教えてもらいました。
短い動画と合わせて、ここに補足記事を残しておきます。エーウイングのみんなが制作を進める上でのヒントになればうれしいです。
コンセプト設計の前に大切なこと
上杉さんがまず大切にしているのは、コンセプトを考える前に「深く理解する」こと。
クライアントである企業や病院について、
- 組織の特徴
- 働く人たちの想い
- 製品・サービスの特性
- 競合との違い
などを丁寧に捉えていきます。クライアントが想いを馳せるユーザー側の理解も、解像度高く調査していきます。(ユーザーについてはまた別の機会にお聞きする予定です)
クライアントとユーザーをつなぐ「製品やサービス」を中心に据え、そこから「5W1H」を整理していく。そんなプロセスを通して、コンセプトへと辿り着いていく様子が見えてきました。
コンセプトの役割をちゃんと意識する
上杉さんにとって「コンセプト」とは、クライアントの想いや、ユーザーの感情を想像しながら、その間をつなぐウェブサイトで取るべき戦略を指しているのだとわかりました。
クライアントの大切な想いをそのままコンセプトにすればいいわけではありません。上杉さんは、Web設計者として冷静なポジションに立ち、「クライアントにとって本当に必要なウェブサイトとは何か」をじっくりと考えている。だからこそ、競合のWeb戦略についても深く分析し、クライアントが取るべきポジションを見つけたうえで、その位置にしっかりと釘を打つように、コンセプトを立てる。
競合についても、ただライバル視するのではなく、「真似したくなる優れたWeb戦略」を見つけたら、積極的に取り入れるべきだと考えていようです。「盗む」という表現を使っていたのも印象的でしたが、これは単にコピーするという意味ではなく、市場のトレンドに合った戦術を柔軟に取り込み、より良い制作に活かすためのポジティブなスタンスからきていると感じました。
クライアントにとって大切な想いの整理と、それをどうウェブサイトに落とし込むかを同時に考えることは、非常に難しいことであり、だからこそウェブサイトにおけるコンセプト設計は、エーウイングが考え抜かなくてはならない大切な役割なのだと、深く実感しました。
コンセプトは「宣言文」のように持ち続けるもの
コンセプトは一度作ったら終わりではありません。
ディレクトリ制作、ワイヤー制作、デザイン制作、コーディング、リリース、そして運用まで、ずっと軸として持ち続けるものだと、上杉さんは教えてくれました。この「軸を持つ」という考え方が、クリエイターとしてブレないための大切な支えになっていることと同時に、制作に関わるすべての人が、このコンセプトを持てるようにしたいと考えていることが分かりました。
実際のコンセプト設計プロセス
上杉さんはコンセプトを立てる前に「クライアントが伝えたいポイント」から考え始めるのが特徴的でした。この「伝えたいポイント」とは、ただの説明ではなく、クライアントが目指すビジョンや理想の未来を指しているのだと気づきました。
そこから、
ユーザーに届きやすい言葉=キャッチコピー
制作チームで共有するための言葉=コンセプト
へと展開していく流れが自然で、非常に納得感がありました。
順番を間違えずに、ビジョン → キャッチコピー・コンセプトと整理していくこの考え方は目的と手段がブレずに済む。とても理にかなっています。
コンセプトは「持ちやすい」言葉で
コンセプトは表に出るものではありませんが、チーム全員が覚えやすく、持ちやすいものであるべき。上杉さんはそう考えています。「使える言葉」「忘れにくい言葉」を選ぶことで、制作の現場で自然と使われ、力を発揮するコンセプトになる。この考え方からコンセプトとは何かを考えると、ウェブサイトの一番最初の種のようなものなのかなとも感じられます。ウェブ開発に携わる者として、ウェブ設計者が願ったサイトへの想いをしっかりと引き継ぎながら、制作に挑みたいなと改めて思いました。
社内研修講師・上杉さんの紹介
UI/UXデザイナー・上杉さんは、2016年にほぼ新卒でエーウイングに入社しました。当時、グラフィックデザイナーからウェブデザイナーに転向する流れが主流だった中で、純粋なウェブデザイナーとしてトレンドをいち早く吸収し、目覚ましい成長を遂げてきた存在です。これまでにエーウイングが手がけた数多くの重要なプロジェクトでデザインを担当し、実績を重ねてきました。最近では、立川市役所公式サイトのデザインを担当し、全国広報コンクールで入選という成果もあげています。これからもエーウイングにとって、欠かせないキープレイヤーであり、さらなる活躍が期待されるデザイナーです。
編集後記
今回の研修は、みんなの代わりに僕が上杉さんにインタビューする形式で行いました。上杉さんが「道具を大事にする職人さん」のように、ひとつひとつの意味を大切にしていることがとても印象的で、心を動かされました。
今後も、上杉さんが大切にしている「制作の道具」とその意味を、みんなと一緒に学び、共有していきたいと思います。
この記事を書いた人・エーウイング代表 門脇 恵二